イケガミコフ『21世紀の生存戦略』

新卒外資コンサルからIT企業社長となった著者が、自身の備忘も兼ねて日々の心境を綴るブログ。なるべく毎日更新。読者の皆さんと一緒に21世紀を生き抜く力をつけていくのが目的です。左脳的切り口で右脳的題材でも取扱うことを特徴として、世の中の出来事から、その裏にある時代性を読み解いていければと思います。その上で、時代性に合う生き方、新しい生きる力を提案し、自らも実践したい。なかでも、個人が個性を発揮して生きることをメインテーマに据えたいと考えています。

2013年02月

もしコンサルから経営者になった人間が将来、学校をつくるなら

みなさま、建国記念の日、おめでとうございます。
2673年目も宜しくお願いいたします。

自分には何ができるだろう?

 敗戦からの約十年は「新教育の時代」と呼ばれている。戦前の軍国主義、国家主義的教育を改め、占領国アメリカの指導のもと民主主義や科学教育が重視された。授業時間を短縮し、自由研究を導入することで、画一的教育の弊害を排除し、子供たちの個性と多様な才能を伸ばそうとするものである。
(中略)
 こうして個性を訴えた新教育は、いつの間にか競争と選抜による人材開発システムへと編曲された。その曲調は、戦前の「軍事」行進曲を「経済」にアレンジしたものであり、これが日本中で奏でられた。教育会においては「受験」行進曲となって子供たちの足並みを揃えさせ、中等教育の目的はこの単調で画一的なリズムを子供たちに仕込むことに集中された。

(『出る杭を伸ばせ―教育実験校「茗渓学園」プロジェクト』)

  • 引き続き『茗溪学園』(以下、同校)ドキュメント本(以下、同書)を出発点に教育の話を続けたい。

  • 教員から民間企業を経て校長となり、「日本でも世界でも良い仕事のできる人間を育て」ると宣してそれを実践した岡本稔氏の取組みには、大きな共感と尊敬の念を抱くところであり、実際に輝かしい成果を上げ始めている点で同校は既に圧倒的であるが、それではこれからの私たちには何ができるだろうか?

  • 同校の取組みは夜空に輝く一点の希望の星が如き輝きを放っているが、これを単に全国に広げれば、世界で通用する人材の育成は果たされるというものでもないと思うので、さらなる発展のためにあえて批判を試みたい。


偏差値教育へのアンチテーゼとしての『茗溪学園』

 

学園の方針は知識に偏らない全人教育であり、一人ひとりの才能を引き出すことを目指している。偏差値主義に対する異議申し立てであり、いわば人間性の復活を目指すルネサンス運動である。

(同書)
  • 同書によれば、茗溪学園で岡本氏の実践した教育は、詰め込み型偏差値教育(以下、従来型教育)へのアンチテーゼであり、戦後暫くの間行われていた「新教育」の復活であるという。

  • 同校の生まれた背景として、1960年代に冷戦が本格化し、また経済が復興をはじめた際に、政財界の介入によって戦前教育のアンチテーゼであったはずの戦後10年間の「新教育」が、戦前教育へと揺り戻ってしまったことがあるようだ。

  • その揺り戻しへのカウンターとして同校の設立があったといい、実際に同書の中で紹介されている取組みの数々からは、逆ハンドルを切るような徹底したカウンターぶりが大いに感じられ、共感を憶えるところである。


総論としての「新しい教育」の可能性

岡本の描く学園生活の理想図は、自由よりも規律の色が濃い。禁欲的であり、求道的、これに質実剛健も加わる。学校のルールに従いなさい。さらに、学業、部活、行事のすべてに全力を尽くしなさい。その中で自分の進むべき道も見つけなさい。

(同書)

  • しかし本来であれば、(新たな教育のあり方を考える上では、)単に戦前・戦後の対立軸では語られない新機軸へと止揚(アウフヘーベン)される必要があろう。

  • しかしながら、(少なくとも同書で紹介されている範囲内では、)同校の取組みは、従来型教育に対するアンチテーゼを超えるものとしてはやや物足りなさが残り、総論としては、そこにさらなる発展の可能性があるものと考えられる。

  • それでは、もし同校の取組みが、「学力に偏重しない教育」「詰め込まない教育」「偏差値を重視しない教育であって、従来型「ではない」教育としてしか定義できないようなものであるとするなら、それすらもひとつの通過点として、教育のあり方は今後どのような新機軸をもって止揚されるべきだろうか?

偏差値教育を止揚する新しい教育とは?

  • 茗溪学園が、学力偏重の詰め込み型偏差値教育へのカウンターであるということを出発点にした場合、それを止揚する新しい教育では、「価値づくり」「アウトプット」「分散値」の3つがポイントとなると考えられる。

  • このように書くと、結局、「学力」「詰め込み」「偏差値」に対立する概念を持ってきただけのように見えるのだが、これらの新しい3点は従来型の3点を否定するものでは全くなく、いずれも従来型の3点の目的として位置づけられる、従来型の3点を手段として内包する点で、次元の転換を実現しているつもりである。

  • 例えば、「アウトプット」の点で言えば、知識を詰め込まないわけではなく、様々な情報自主的・効率的収集した上でそれを意味のある形に組み立て、成果として他者に伝える(さらには他者を動かす)ことを生徒のゴールとして評価するもので、そのために重要なポイントは詰め込むことでも、反対に引き出すことでもなく、価値があってユニークなアウトプットを出すのに必要な能力正しく鍛えることである。

  • ここで詰め込むのをやめて「ゆとり」を持たせたり、無理に引き出そうとした結果が、社会で求められる人材要件とのギャップをますます拡大させてしまった「ゆとり教育」なのではないか?

  • これらの3点については、それぞれの点についていくらかその意図するところをもう少し書き留めておきたいところなので、例によって次回更新に続かせていただきたい。

    (このように無計画に書き始めてだらだらと続いてしまうのはひとえに逆算ができていないからであり、私自身も新して教育の下、訓練して改善したいと思ったり。。。)

  •  

「出る杭を伸ばす教育」は日本にも存在した!

教育実験校「茗溪学園」

  • 先日、ある先輩の過去を根掘り葉掘り聞いてみた。

  • ひとえに「どうやったらこんなに自ら生きる力に優れた、個性的な人ができあがったのだろう」という個人的な興味からである。

  • 話を伺ってみると、幼少期の海外でのサバイバル生活の影響も多分にあるようだが、「茗溪学園」という中高一貫校の教育によるところが大きいようだった。

  • こうして、自ら生きる力を持った優れた人材を育てる中等教育のあり方についてさらに知るべく、「茗溪学園」についてのドキュメント本(以下、本書)を読んでみた。



輝かしい実績をあげた「出る杭を伸ばす」教育

しかし、熱した空気は時間と共に温度を下げる。冷めた空気と混じり合い、緩やかに安定していくのだが、岡本はこの自然の原理に従うことを許さない。
「二割が賛成して決まったら全員が協力しよう。まず実践してから考えようじゃないか」と常に不安定を作りだし、自らと教員、生徒を休みなく動かし続けるのだ」

(本書より)
  • 本書を読んでさらに知った「茗溪学園」(以下、当学校)は、想像以上に素晴らしい教育機関であった。

  • 当学校では、 「人類ならびに世界に貢献しうる『国際的日本人』を育成すべく知・徳・体の調和した人格の形成を図り特に創造的思考力に富む人材をつくる」を建学の理念とした「知識に偏らない全人教育」の実践が行われている。

  • そして、実際に、「田舎の風景」広がる茨城の地から、創立30余年のうちに、宇宙飛行士の星出氏や「もしドラ」の岩崎氏をはじめ、数々の著名人を輩出している。

  • 本書の中では、理想的な教育理念を実際に実行に移す際の様々な困難や、具体的施策の数々が紹介されている。

夢が周囲を動かす

熱は、高温の物体から低温の物体へ移動し、自然に低温の物体から高温の物体へ移動することはない。 これを熱力学第二法則という
(『改訂版 高等学校 物理Ⅰ』数研出版)

(本書より)
  • 茗溪学園の掲げた教育理念は、それを実際に実行に移す上では、例えば面接重視の入試や、周到に計画された課外活動など、実践する手間が膨大で、受験対策に時間を避けないことによる保護者の不安なども真正面から受け止めなければならない。

  • そのため、理念を掲げたことよりもそれを徹底して実行に移し、優れた人材の輩出という成果に繋げた点で、このプロジェクトは計り知れない価値があるものと感じる。

  • こうしたカロリーを要する偉業を達成できたのは、(本からの情報のため、多少脚色されているきらいはあるだろうが、それでも)初代校長である岡本稔氏の情熱によるところが大きいようで、夢を語り、それをあきらめずに徹底することが、周囲の人々の心を動かして伝播し、やがてひとつの潮流をつくることを改めて思い知らされた。

  • 本書から受けた前向きな刺激を受け止めて、自分自身も夢を発信・実現していきたい。



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自己紹介
ユーゴスラビア生まれ。理工学部を卒業後、A.T.カーニーに入社。様々な業界のコンサルティングを手がけた後、エブリスタ立上げに携わり、同社代表取締役社長に就任。15年3月末に退任し、現在はメディア企業のデジタル戦略コンサルを手がける。グロービス経営大学院「ネットビジネス戦略」講師。
このブログについて
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