絶望の国の幸福な若者たち
絶望の国の幸福な若者たち [単行本]

読んでみた。

26歳の青年が書いたもの
としては、見事と言う外ない。

前半から中盤にかけては、
文献の引用や調査結果
の羅列が続き、

現代の若者像が
若者の定義から丁寧に
描かれる。

終盤ではそれらの総括と
これからの時代の若者
に関わる論点が提示される。

著者の考えは、
終わりが近づくにつれ
徐々に明らかになる。

 ★ ★ ★

本書のエッセンスとしては
概ね以下のようなものだ。

・現代の若者は多様であり
ひとくくりには論じられない

・若者は内向きだけれど、
一方で、社会貢献したくて
ウズウズしている

・連帯する口実として
「日本」の重要性は高まっているが、

・ナショナリズムを利用することは
あっても、目的化すべきではない

・日本史上最大の殺人事件は
太平洋戦争であり、被告は日本だ

・若者にとって、
原発反対などのデモは
絆や自分の居場所を実感する
ためのお祭り

・だから、それらを感じることが
できたらすぐに冷めてしまう

・震災でさえも、祭りとして
片づけられそうになっている

・万能と思われるネットも
原発直後の危険度を知るには
何の役にも立たなかった

(おいしいレストランを知るのとは
わけが違っていた)

・祖父母と孫では、1億円の格差がある

・それでも、WiiやPSPのない
過去の時代に生まれたいとは思えない

・承認欲求は、ツイッターやニコ動で
手軽に満たせる

・日本は女性に替えて、移民では無く
若者を二級市民にしたてた

・カーストの中の若者
という身分として捉えると、
そのうち全国民が若者身分になる

・明治の日本にとっては
産業革命の方が市民革命よりも
パクりやすかったのでは

・だから、工業化はしたけど
民主化はしなかった

・現在の政治制度と
若者の関心の無さからして
世代間格差はなくならない

・日本が侵略される、と聞いても、
だから、何?と思う

・昔の価値観に拘らなけば
若者にとっての「現在」は、
そんなに悪い時代じゃない

・ただし「未来」は現在よりも
不透明で、危険。

 ★ ★ ★

忙しい人は、
巻末の佐藤健さんとの対談
だけを読んでも面白い。

それから、個人的には
「あとがき」も良かった。

もちろん「あとがき」から
そう発見は無かったけど、

自分の考えとの距離が近く
自分が若者を名乗ることが
許された気がして嬉しかった。

全体的にファクチュアルで
客観的なところは、
文献としては良いのだろうが、

私は終盤の総括や、
佐藤さんとの対談、あとがきなど、
主観的なところを楽しんだ。

「日本史上最大の殺人事件は
戦争であり、被告は日本」

というような戦後史観の
若者が書いた若者論だからこそ
本書は価値があると思うし

それゆえに、
客観的なデータよりも
主観的なメッセージに注目
したのだと思う。

もちろん、自虐史観など
相入れない部分もあったが、
それはそれでよいのだ。

私も仕事柄、
その道何十年の専門家と
お話することが多いが、

コンサル時代のように、
ファクトとロジックだけで
 バリューを出すことには
限界を感じている。

そんな時、
自分の世代を代表する
体験や感性に頼ることは多い。

そういう意味では、
本書の立場には親近感を覚えるし、

前半から中盤にかけて
やたらとファクトベースの
若者論が多いことも合点がいく。

私自身、
若者代表の肩書きを借りて
持論を展開する時には、

果たして持論が

全くの個人的なものなのか、
若者の完成や体験を多少でも
代表できているものなのか、

不安でたまらないことがあるからだ。

この本を読んだ今
これから先は、
多少でもそこに線が引けそう
なところは嬉しい。

 ★ ★ ★

ところで、こういう類の本は、
私たち読者の側が
「何のために読むのか」が難しく、

漠然と読むと
「へぇ」を積み重ねて
読み終えてしまうものだ。

もちろんそれでも構わないが、
例えば、

この本から読み取れる若者像から、
若者に刺さるサービスやコンテンツの
有りようを考えよう

などと、テーマを決めて読むと
吸収する効率が上がる。


私の場合だと、

この本から読み取れる若者像から、
次世代の中等教育の
有りようについて考えよう

でも良いかもしれない。

明確なテーマを持って読むと、
必ず何らかの発見がある一冊だと思う。

仕事や育児などで、
若者を相手にしている全ての方に
おすすめしたい。