昭和天皇独白録 (文春文庫)
昭和天皇独白録 (文春文庫) [文庫]

読んでみた。

本日(0時を回ってしまったので
それはもう昨日のことであるが)は

昭和の日(旧「天皇誕生日」)
であったので、

其れを機会に読んでみたものだ。

同書を読んでみての
私の個人的な気づきを
3点ほど記しておく。

私たちが余りにも無知であること


まずは
昭和天皇の軍政両略に対する
関わり方について、

私(及び恐らくは大多数の若者)
が知らな過ぎるということである。

同書に拠れば、
『木戸日記』や『本庄日記』等により
同書以前に明らかにされている
事柄も多いようだが、

私にとってはあまり馴染みが無かった。

両親や祖父母の世代と比べても
私の世代の之に対する理解度は
低いように思える。

今日、憲法改正が多少なりとも
現実味を帯びてきている中で、

私たちの御先祖が、
とのように国家を運営してきたか
を知ることは重要であろう。

これを機会に複数の文献に当たり、
見識を広めたいと思った次第である。

(注:二二六事件について)

叛軍と断じ、経済を心配し、鎮圧を命ずる昭和天皇。
そのときの天皇の強い意志と直接的な統率は、
『木戸日記』 『本庄日記』などでひろく知られている。

(同書注意書きより) 

リーダーが志を果たせる国にするために

続く2点目と3点目は、
1点目に従属するものであり、

見識を広めるにあたって
どのような観点を持つのが良いか
について個人的な所感を述べる。

まず、リーダーがその能力を
十分に発揮できる仕組みの構築
という観点である。

私は、これまで、
どちらかというと昔も今も日本は
リーダー不在の国であって、

これからは優れたリーダーを
育成することが肝要だ
と考えていた節があった。

しかし、同書をきっかけに、

優れたリーダーがいても、
仕組みがそれを活かせなければ

結果としてリーダーシップは
行き渡らない

ということを実感してしまった。


同書の巻末の座談会でも
触れられているように、

この聞書(独白録)が
どのような意図を持って
記されたものであるかによっては

聞書の内容の真偽に疑義が及ぶ
こともあるだろうし、

ほぼ真実であったとしても、
終戦直後の昭和天皇の認識であって
当時の日記ではないのだから、

昭和天皇のリーダーとしての
適格性を議論すること
は私の本意でないし、
容易に結論が出るものでは
無いだろう。

一方で、
もし昭和天皇が積極的に
リーダーシップを発揮しようと
していた場合に、

内閣及び統帥部の末端まで
それが徹底されたか?

については
疑問の余地が大きい
のではないか。

昭和天皇は憲法を重んじ、
立憲君主制を貫いた。

其れが同書にあるように
『クーデタ』(即ち国民の分裂)
を憂慮して本人の希望に反して
そうせざるを得なかったものなのか

積極的にその姿勢を貫いたものか
によらず、
結果として、

昭和天皇が強硬に
リーダーシップを発揮する
ことは殆どなかった。

その事実を踏まえると、
リーダーシップが
正しく発揮されなかったことの
要因として、

リーダーに適格な人間がいたかどうか
だけでなく、

リーダーが正しく指揮・命令できる
仕組みが無かった、
または
そもそも、リーダーという
ポジションが無かった、

という点が問題であると気づく。

日本はもともと
いい意味でも『換骨奪胎』が
得意な国だ。

経営判断が、
現場で都合よく判断される。

もっと悪く言うと、
ミドルマネジメントが、
セクショナリズムに突き動かされて、
トップをないがしろにする。

こういうようなことは、
企業経営にも起こりうる。

 
また、 
今後、改憲に向けた議論が
ますます盛んに
行われるようになった場合、

直接選挙制についても
議論が及ぶことも考えられる。

その際に、
リーダーがその志を実現する
ために必要な仕組みについて、

私たちもしっかりとした考えを
持っていなくてはならないだろう。

所謂御前会議といふものは、おかしなものである。枢密院議長を除く外の出席者は全部既に閣議又は連絡会議等に於て、意見一致の上、出席してゐるので、議案に対し反対意見を開陳し得る立立場の者は枢密院議長只一人であつて、多勢に無勢、如何ともなし難い。
全く形式的なもので、天皇には会議の空気を支配する決定権は、ない。
(同書独白録より)


『過ちは繰り返さない』と思うなら

同書独白録の
読み物としての魅力は、

巻末の座談会でも
其の点では意見の一致を
みているように

昭和天皇の人間くささ
であると思う。

特に、人物評については、
木戸内大臣の影響が
如何程にあったかはさておいて、

率直で歯に衣を着せないもの
が多く、座談会の専門家をして
「平沼さんは気の毒だ」
などと気を遣わせているほどだ。

人事(アサインメント)は
リーダーの仕事の中でも
ビジョニングに次ぐくらい
重要な仕事であるから、

リーダーとしては
人物評もはっきりしていた方が
良いとは思うが、

それのひとつひとつが
妥当であったかは
今の私には判断がつきかねるので
ひとまず追究は避けたい。

一方で、

誰がしたどの判断が、
結果としてよかったのか?
悪かったのか?

についての研究は必要だと思うし、
もっと勉強したい。

これは、まあ言葉にすれば
至極当たり前のことではあるが、

昭和天皇が軍政両略に
様々な強い意志を持っていたが
聞き容れられなかったと、
同書独白録にあることが、

私の不勉強もあって
私にとっては大変新鮮であり、
改めて、何が正しかったのか
を知りたくなった次第である。

これは決して戦勝国に
押し付けられた裁判結果でなく
我々が自らが戦犯を
明らかにすべきだ!
という感情的な話ではなくて、

これからの我が国あるいは
人類の進歩を希求する上で、

客観的に正しかった意思決定と
誤った意思決定

理由とともに仕分けておく
ことが必要だと
改めて感じたものである。

「元来陸軍のやり方はけしからん。
(中略)
今後は朕の命令なくして一兵でも動かすことはならん」
(同書中、『西園寺公と政局』からの引用)



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