たった一人の生還―「たか号」漂流二十七日間の闘い (新潮文庫) [文庫]

読んでみた。


本書は
1991年の年末に開催された
ヨットレースの途中に遭難して、

救命ボートの上で
5人の仲間とともに

ひたすら助けを待って
27日間洋上を漂い続け、

奇跡的に助かった著者自身による
ノンフィクションである。

もともとヨットには7人の方が
乗っていたが、

ひとりの方はヨット転覆時に、
著者以外の5人の方は
救命ボートの上で亡くなっている。


 ★ ★ ★

以前、
映画『127時間』について書いた記事
では、

想定外の危機下において

すべきことを『断行する』勇気
逆算の重要性について書いた。


『127時間』との比較において
本書は、同じ危機下であっても、

(遺族の方への配慮のため
 という事情もあると思うが)

極めて日本的に進む。


つまり、逆算に基づく
ドラスティックな変革は行われず、

集団主義の下、

ただひたすらに困難に耐え抜く
『積上げ』式である。


6人で乗り込んだ
たたみ二畳ほどの救命ボート。

非常食のビスケットは流出して
1人分しかない。

ひのビスケットを均等に分けて
狭いボートで身を寄せ合い、

リーダーは力の限り
クルーを勇気づけ続けて
一番最初に逝き、

その奥様は、著者の帰還後、

「ちゃんとウチの人は、
 みんなを指揮していましたか」

と尋ねたという。


集団の和を重んじる
日本人ならではの良さが
あるように感じた。


もし個人主義のもと
極端に逆算をしたならば、

自分だけは助かるために
どんなことも厭わない人が
出てくるかもしれない。

一人でもそういう人がいたら
地獄絵図になっていたかもしれない。


個人主義と集団主義、

積上げと逆算、

どちらが正しいということは
一概には決められないだろうけど、

集団で漂流して、
助けが来るまで何時間か分からない
という本件では

日本的な集団主義、
積上げを徹底する道もあるのだ
と感じた。


 ★ ★ ★

なお、月並みだが、
こういった話を読むと、

本当に

日々、
普通に生きていることの
ありがたみ


を感じずにはいられない。


バイタリティ溢れる
カリスマ経営者の本を
立て続けに読んだ後だったという

個人的な文脈のせいも
あるのだけれど

著者が生を求めて
洋上を漂っている1日と、

自分の今日の1日が、
おんなじ長さだ!


ということに愕然とする。


個人的には、
(逆説的だけど、)

生のありがたみを感じれば
感じるほど、

『死狂い』でいくしかない。

つまり、
死んでもいいと思えることのために
毎日全力をつくす。



油断していると気が緩むけれど
こういう本を読むたびに
気は引き締まる。


(ハラハラしながら)すぐ読めて
それでいて気合いが入るので、

モードを切り替えたい人に
オススメの一冊です。