先の戦争の中でも、ニューギニアは、
とりわけ多くの犠牲者を出した戦場
として知られる。

食料や弾薬の補給もままならず、
孤立無援となった日本兵の死者は
十万人を超えるという。
 
これはそのニューギニアを戦った
帝国陸軍第十八軍の司令官、
安達二十三(あだち・はたぞう)
中将の物語だ。

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もともとこの本を読もうと思ったのは、
逆境下における指揮官の
決断の内容を知りたいと思ったからだ。
 
しかし、読んでみると
全く別のことに気付かされた。
 
それは逆境下における
強い組織づくりだ。

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リーダーの役割は、
何も決めることばかりではない。
 
むしろ、不測の事態が
次々と起こる環境においては、

それぞれのメンバーに
「決めてもらう」ことの方が重要だ。
 
その点十八軍では安達将軍の考え方が、
しっかりと組織に浸透していたようだ。

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本書では、例えば、
「すべては愛をもってせよ」
というような、

およそ陸軍司令官に似つかわしくない
訓示も紹介されているほか、

他にも、安達将軍にまつわる様々な
エピソードが取り上げられている。
 
私のように新卒で
コンサルティングファームに
入社したりすると、

とかく戦略や仕組みなどハード面を
重視してしまいがちである。
 
しかし、実際には
総て人がやることだから、

リーダーやメンバーの
具体的な言動が及ぼす効果
というのも無視できない。

決断の内容を求めて
読み始めた本書だが、

学びは寧ろ、日々の将軍の
具体的な言動のほうにあった。

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改めて、考えてみて欲しい。
 
もし自分が、かのニューギニアの地で、
次々と敵の攻撃や飢えにより倒れゆく
将兵たちを前にしたら、

果たしてどんな言葉を
かけることができるだろうか?

国のために将兵たちのために
どんな行動をとれただろうか?

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日本軍は戦線を拡大しすぎたために
南洋では大量の死傷者を出した、
と言って片付けるのは簡単だ。
 
でも、そこにもっと学ぶべきことが
あるのではないか?
 
例えば、本書では、
安達将軍の配下の将兵に対する
いたわりと感謝の念が際立っている。

もし自分が同じ状況に置かれた時に、
同じことができるだろうか?

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実際に、安達将軍の哲学や言動は、
日本の将校の中でも稀なケースだ。
 
また、安達将軍と言えば、
戦後の裁判で
最後まで部下を救うために力を尽くし、
その後自決して果てたことでも知られる。

これも、日本軍の将校、
皆ができたことではない。

この話は、わずか七十年ほど前に
私たちの先輩が実際に体験した出来事だ。

タブーとして目を背けるのは
あまりにも勿体無い。

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なお、本書の最後には、
安達将軍の遺書が掲載されている。

上官である今村大将宛の遺書は、
配下の将兵への愛に溢れている。
 
第十八軍が見た地獄を知った上では、
その心中はいかばかりかと、
察するに余りある。
 
小官は皇国荒廃の関頭に立ちて皇国全般作戦寄与のためには何物をも犠牲として惜しまざるべきを常の道と信じ、打続く作戦に疲労の極に達せる将兵に対し更に人として堪え得る限度をはるかに超越せる克服敢闘を要求致候。之に対し黙々之を遂行し力竭きて花吹雪の如く散り行く若き将兵を眺むる時君国の為とは申しながら其断腸の思いは唯神のみぞ知ると存候。当時小生の心中堅く誓いし処は必ず之等若き将兵と運命を共にし南海の土となるべく縦令(たとえ)凱陣の場合雖(いえど)も渝(かわ)らじとのことに有之候。(遺書より一部を抜粋)

また、本書には、
ご子息宛ての遺書も掲載されている。

〈画像〉

こちらは、まるで
現代の私たちに向けて書かれている
ようでもあり、

涙が止まらなかった。


立派に再建された今のわが国を見たら
安達将軍の心も少しは休まるだろうか。

今後も皆で清節を持し、
より一層、輝ける将来を建設して

将軍にも見てもらいたいものと、
気が引き締まる思いだった。