課長の紹介で入った小さな飲み屋で、
年齢不詳の女性あさひを前に
どんどん酒が進んでしまう田端。
 
※続きものです

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田端:随分飲んじゃった。
 
あさひ:大丈夫?
 
田端:わかんなーい。

あさひ:明日、会社ちゃんと行けるの?

田端:朝一番に行く。課長と約束したんで。

あさひ:真面目なのね。

田端:怒られた翌日にこそ、一番に会社に行くといいんだって。そんなもんかな。

あさひ:それは、そうかもしれないわね。

田端:そうなの?なんで?

あさひ:田端さんが怒られちゃってたってことは、部署のみんなは知ってるのよね。

田端:知ってると思う。会議の後なんか、それが気まずくって、すぐ会社を出ちゃった。

あさひ:ひょっとして、みなさんも気まずいんじゃない。

田端:そうなのかな。

あさひ:田端さんが、みなさんの立場だったら、どうかしら。1ヶ月前に部署に移動してきた入社4年目の子が、部長にこっぴどく叱られてたら、本当は何か声をかけてあげたくない。

田端:それは、そう。でも、巻き添えを食いたくないから、その場では関わりたくない……かな。

あさひ:本当は声をかけてあげたい。自分にもそういう風に失敗した経験があったとしたら、余計にね。

田端:でも、部長に叱られた直後に、あからさまにみんなの前でフォローはできない。恥ずかしい話だけど、自分に火の粉がかかったらやっぱり嫌だし。

あさひ:そうでしょう。だから、明日早く行ったほうがいいわ。
 
田端:そうか。朝、人が少ないうちは、今日のことについて話してても、気まずくないかも。

あさひ:いつも、誰が最初に来てるか、知ってるの。

田端:うーん……となりの課長の巣鴨さんかなあ。帰るの早いし。でも課長が先ってこともないか。

あさひ:それ、本当は怒られるよりも前に知っておかなきゃいけないことよ。

田端:そうなの?

あさひ:そうよ。別に毎日いる必要はないけれど、自分の所属しているチームが、朝から晩までだいたいどんな一日になっているか、田端さん、気にならないの?
 
田端:気にならないわけじゃないけど……、それは課長の仕事だし……。

あさひ:私だったら、気になっちゃうな。自分がリーダーじゃなかったとしても、自分のチームのことは。

田端:そう言われると、僕に余裕がないだけなのかも。

あさひ:田端さん、真面目そうだもん。

田端:というか、異動したてで、自分のことで精一杯で、周りを見ている余裕がないだけだと思う。

あさひ:そうよねえ。

田端:あさひさんは、どんな時でも周りに気遣いができそうですもんね。

あさひ:私も若いころは、自分のことばっかりだったわよ。

田端:そうなんですか?あさひさんは、会社に勤めたりしてたんですか。

あさひ:私はね、会社に勤めてたことはないわ。でも、女優になりたくて、よく芝居に出たりはしてたから、なんとなく、そういうことはわかるの。

田端:女優!どうりで美人なはずですよ。

あさひ:ふふふ。結局、その夢はあきらめたんだけどね。でもね、ある時、気づいたことがあったわ。

つづく