品川:おい、田端じゃないか。

田端:え?品川さん?

☆゚+.☆゚+.☆゚+.☆゚+.

 ドアから入ってきたのは、田端の3月までの上司、マーケティング部の品川であった。

品川:まさか、お前とここで会うなんて、な。

 田端の横に腰掛ける品川。

田端:品川さん、前からここへ来ていたんですか。

品川:まあな。

田端:こんないいところがあるなら、俺にも教えて下さいよう。

品川:なんだ田端お前、酔っ払ってるな。実は、俺がここに来ていることは秘密なんだ。

田端:へ?

品川:俺がここに来ていることは、俺とあさひさん以外、誰も知らない。あとはお前だけだ。

田端:はあ……。

品川:とにかく、今日俺に会ったことは誰にも言うんじゃないぞ。

田端:わかりました。

品川:そもそも、この場所自体、秘密だからな。

田端:そうなんですか。

品川:なんだ、まだ聞いてないのか。

あさひ:あら、伝えるのを忘れてたわ。

品川:……いいんですかそんなユルさで。

あさひ:バーサクラスのひとつ目のルールは——、

品川:バーサクラスのことを決して口外しないこと。

あさひ:バーサクラスの二つ目のルールは——、

品川:バーサクラスで見聞きしたことを決して口外しないこと。

あさひ:バーサクラスの三つ目のルールは——、

品川:バーサクラスの外でキャストと会わないこと。

田端:えー!?

品川:何だ急に。

田端:そんな……。

品川:もしかしてお前、田端のくせに、あさひさんを口説こうとか思ってたのか。

田端:思ってました。むしろ、口説いてました。ていうか「くせに」って何ですか。

品川:命知らずなやつだな。

あさひ:いやいや、命知らずはおかしいでしょ。

品川:田端、お前はまずはあさひさんのアドバイスをよく聞いて、仕事ができる男になるんだな。

田端:アドバイス?

品川:……何をしていたんだお前は。

田端:あ。自分のために周りを見る。ですね。……てか、何で知ってるんですか!

品川:知らん。今聞いたよ。

田端:え?でも、あさひさんのアドバイスをよく聞けって。

品川:内容までは知らん。

田端:周りが見えたら、劇作家になれ。

品川:……何だそれは。

田端:それもあさひさんのアドバイスです。

品川:ここで見聞きしたことをペラペラ喋るなと言っただろう。

田端:聞いておいて、それはひどい。

品川:聞いてない。お前が勝手に喋ったんだろうが。

田端:でももしかして、品川さんが僕に「あさひさんのアドバイスをよく聞け」って言ったのって、品川
さん自身も、このお店であさひさんに色々聞いてるからなんですか。

品川:さあな。

あさひ:田端さん、明日、朝一番に会社行けそう?

田端:!! ……そうだった! 今夜はこれで失礼します!

あさひ:ふふふ。また来てね。

田端:いいんですか。

あさひ:今度からはお金をいただくわ。

田端:も、もちろんです。

あさひ:このアプリを入れておいて。

田端:わかりました。

あさひ:これで予約してね。

田端:はい!……ちなみに、このお店には、あさひさん以外の方もいらっしゃるんですか。

あさひ:いるけど、なんでかしら。

田端:!! いや……何でもないです!

あさひ:田端さんって誰にでも優しい言葉をかける感じなの?

田端:違います。あさひさんにしか興味ありません。ごめんなさい。

品川:気持ち悪いやつだな。早く帰れ。

田端:品川さん、ひどいです! でも、帰ります。

あさひ:ふふふ。またどうぞ。

こうして、田端はBARサクラスを後にしたのだった。