イケガミコフ『21世紀の生存戦略』

新卒外資コンサルからIT企業社長となった著者が、自身の備忘も兼ねて日々の心境を綴るブログ。なるべく毎日更新。読者の皆さんと一緒に21世紀を生き抜く力をつけていくのが目的です。左脳的切り口で右脳的題材でも取扱うことを特徴として、世の中の出来事から、その裏にある時代性を読み解いていければと思います。その上で、時代性に合う生き方、新しい生きる力を提案し、自らも実践したい。なかでも、個人が個性を発揮して生きることをメインテーマに据えたいと考えています。

地下アイドル

ネットとリアルの共同制作

※前回に引き続き,地下アイドルについて
 
<3. 運営にとっての「会いに行けるアイドル」の意味合い>
 
これまでの2回の記事で,
ファンにとっての魅力が「ともにステージをつくれる」点にあること
それが強固なロイヤリティを形成していることについて触れた

「会いに行けるアイドル」が運営側へ齎す効果は,ほかにもある
 
 
 
―カウンター「FREE」としての「LIVE」
 
「会いに行けるアイドル」ははじめ,
恐らくは後ろ向きな背景から登場したのではないか

デジタルコンテンツと異なり,生のステージは
同じ演目であっても一回一回が別のサービスとなる
(既に述べたように,消費者参加型のステージとなっている
ことも,それに大いに寄与している)

デジタルコンテンツが「FREE」に向かっている中で,
労働集約的であることを許容してでも,
ライブの「リアル」な体験を売るしかなくなった,という側面があって,
必要に迫られて登場したのではないか
 
 
 
―バイラルな広がり

ところが,こうした事情で生まれたリアルとの連動は,
サービスがバイラルな広がりを見せるうえで,
想定外のプラスの効果を生んでいるようにも思える

ネットによるデジコンの「FREE」化により
リアルを取り入れ(ざるをえなかっ)たことで,
皮肉なことにネットにプラスの効果を還元したのだ

ネットは,その低コストと情報伝達の即時性から,
旧来のマスメディアに比べて「生」の情報に強い媒体である

年に一回,完璧なパフォーマンスが行われるのではなく,
(もし学芸会レベルであっても)毎日違うパフォーマンスが行われることで,
ネットで飛び交う情報量は増える

「今日のライブ後の握手会で,○○が髪を下していた」など,
コアなファンから発信される情報が,じわじわと広がっていくことになる

ファン以外には意味が分からない情報でも,
世の中に拡散していけば,気になる人は覗いてみるようになる

こうしたバイラルな広がりは,
言うまでもなく近年のソーシャルメディアの浸透により
そのインフラが整ったものだ
 

 
―コミュニティの結束

さらに,ソーシャルメディアがそのように
ライトなファンの獲得に大きな役割を果たした一方で,
コアなファンの結束を高めて行く上では
リアルなコミュニティが大きな貢献を果たした

1回目から紹介している「ディアステージ」
のようなカフェ併設のステージに行くとわかりやすい

カフェでの常連さん同士の挨拶は
「お,今日は遅かったね」というレベルに親しい

つまり,彼らの「帰ってくる場所」がそこにあり,
そこには迎える仲間がいて,メイド喫茶の有名なフレーズ
「お帰りなさいませ」を地で行っているのだ

こうしたコミュニティは,
ある程度の閾値以上はリアルでしか成立しないものだろう


 
⇒このように「会いに行ける」アイドル発展の背景には,
ファンの獲得から定着化まで,
ネットとリアルの巧みな連携プレーが成立している

みんなの“ハレハレユカイ”の場

※前回に引き続き,地下アイドルについて
 
<2. 消費者参加型サービスが満たすニーズ>

こうしたステージは,ステージ上の女の子にとっては,
ハレとケで言うところのハレの場である
 
終わらない日常(つまりハレとケのケ)が心を蝕む現代社会においては,
国民的なスターのような大きな夢はさておき,
もっと必要に迫られて,ハードルの低い活動としての
「地下アイドル」志望者が増えているように感じる

僕らの学生の頃,
(それが例え文化祭の後夜祭であったとしても,)
ステージに立つことは一部の人気者の特権であった
 
それが今は,フツーの女の子が,
ディアステージのような場所で働いたり,
友達と共同でダイニングバーのステージを借し切ったり,
ニコニコ生放送をしたりして,もう少し手軽に「アイドル」を楽しんでいる
 
ステージの上の彼女達は本当に爽快そうである


 
一方で,実は今回も注目したいのは観客席の方である
観客席が統一的な振り(ヲタ芸)で
熱狂的な盛り上がりを見せることについては既に書いた通りで
 
「ミックス」と言われる猛々しい掛け声も相まって,
はじめは宗教的な不気味さすら感じる

「この人たちは,洗脳されているのでは」
「ちゃんとした日常を送ってるのだろうか」
など余計な心配すらしてしまう
 
でも,見ているこちら側もすぐにすがすがしい気分になるのは,
彼らの笑顔があまりに爽快そのものだからだ

こんなにイマを満喫している人を見ることは
ココ以外にないだろう,とさえ思える

ステージがアイドルとファンの合作であることは前回述べた通りだが,
観客席の彼らにとっても,このステージはハレの場なのだろうか
 
YESと感じさせるのは,観客として共にステージをつくる
彼らの秩序と自由のバランスの巧みさからだろう

彼らの打つヲタ芸の統一感は確かに宗教的な秩序を感じさせるが,
その中には絶妙なバランスで「遊び」も含まれているのだ
 
例えば,コーラスの合間に「おーれーの誰々」などと入る合いの手,
前の人の肩を持って渦を作るなどその曲だけの特殊な振り,
MCの間での観客の笑いを誘うツッコミやイジリなど

こうした,観客間・演目間での秩序を微妙に崩した自由な場が,
観客とした参加する彼らに「自己表現」の余地を与える

リアルにおいて彼らが個性を謳歌する場が無い
と見るのは穿った見方だとしても,ステージを立つまでの覚悟はなくとも,
その一翼を担うことで存分に自己表現を果たしているかに見える
 

 
消費者参加型のサービスにおいては,
コアカスタマーとの一体感を生み出す秩序は重要な要素であろう

一方で,秩序ある中でも彼らが自己表現できる余地を残す
ことがポイントとなるようだ

みんなでつくる地下アイドル

今や日本を代表するアイドルとなったAKB48のルーツが
秋葉原の劇場公演にあることは有名だ
 
実は秋葉原には,AKBよりももっとずっと小さな規模で
ライブを行っている「地下アイドル」がたくさん存在している
 
地下アイドルに会える場所として最も有名なのは,
メディアで紹介されることも多い「ディアステージ」
 
訪れる度に多くの発見があるので,
一部をここにまとめておきたい
(といいながら,複数回にわたってしまいそうである)


 
<1. 高いロイヤリティを生み出す消費者参加型サービス>
 
最初は観客席の異様な盛り上がりに驚くことだろう
(もしかしたら,ちょっと引いてしまうかもしれない)
 
しかしすぐに,一見,ステージを置き去りにして
独りよがりに盛り上がっているようにも思える観客と,
ステージの間の強い連帯感に気づくはず

事前に闇練を繰り返したのでは,
とさえ思える観客の振り(いわゆるヲタ芸)の統一美から,
観客席の連帯感は容易に感じられる

しかし,それだけではない.

MCの際の観客とステージの掛け合い,
曲の中でのアイコンタクトなどから,
ステージと観客の一体感も半端ではない

まるで,我々のような「一見さん」からすると,
観客もステージの一部,パフォーマンスの一部であるようだ

ライブがアイドルとファンの合作であると言ってもよい

ほんの一例だが,

MC中に「笑っていいとも!」などで見られる拍手の制御(で伝わりますかね・・・?)
を観客が求めていつまでも拍手をやめず,
ステージ上のアイドルがそれを感じとってやって見せる,などの場面があった.
例えばこのあたりの以心伝心が何とも心温まるのだ
 
こうした生産者と消費者のコラボレーションは,
コアカスタマーのロイヤリティを驚異的に高いものにしており,
一般のマーケティングにおいても大いに参考にすべき点では
 
実際に,地下アイドルに限らず,メイド喫茶においても
「この子は本当はできる子なんだ.今日は勘弁してやってくれ」というように,
常連の客から女の子や店の「フォロー」をされることがある

また,たまたま知人を案内した日が,
ひとりの地下アイドルの「生誕祭」であったことがあったが,
コアなファンが我々「一見さん」にもサイリウム(ペンライトのようなもの)を配り,
ライブを盛り上げるために点灯のタイミングなど細かく指示してくれたこともあった 

彼らにとっては,アイドルと一緒につくる「俺らのステージ」でもあるのだろう

こうした「身内意識」の高い理想的なコアカスタマーが,
特にネット上で強力なインフルエンサーとなって,「彼らの」ブランドを支えている

 
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自己紹介
ユーゴスラビア生まれ。理工学部を卒業後、A.T.カーニーに入社。様々な業界のコンサルティングを手がけた後、エブリスタ立上げに携わり、同社代表取締役社長に就任。15年3月末に退任し、現在はメディア企業のデジタル戦略コンサルを手がける。グロービス経営大学院「ネットビジネス戦略」講師。
このブログについて
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